[PR]
2025/05/12(Mon)22:11
MBAから会社に復帰したサラリーマンのリハビリブログ
2025/05/12(Mon)22:11
2008/01/17(Thu)15:17
危機管理(Crisis Management)という授業を今学期は履修しているのですが、比較的楽勝科目で、かつかなり面白い。
昨日のケーススタディは自動車のレースに参加している企業の話でした。簡単に内容を説明すると、
その企業は今シーズンからレースに参戦して好調な成績を修め、最終戦でTop5に入れば翌期から大口のスポンサーがつくというビックチャンスを迎えている。ただ、原因は不明だが、どうも気温が低い日はエンジントラブルが起きやすいという懸念を抱えていて、レース中にエンジンから出火しようものなら、資金提供元の石油会社が翌期からスポンサーを降りてしまう。最終戦の朝の気温は5度。過去のレースで最も低い温度。さてあなたならどうする。
です。クラスを幾つかのチームに分けて議論をし、我々のチームは、リスクが高いので今回は参戦しない、と一応の結論を出しました。そしてケースの醍醐味である、実際に企業はどう意思決定しどういう結果になったのか、を教授が説明。その内容とは、、、
レースには出場したものの、普通にクラッシュして途中棄権。
それを聞いた瞬間、生徒はズッコケていました。不参加でもなく、Top5にも入らず、エンジントラブルで出火もせず・・・。クラッシュかよっ、と。
まあ大事なのは最悪な事態を想定することと、キチンとデータを集めて分析すること、充分に準備しておくこと、と教授はまとめていましたが。
さて昨年11月に、BHP Billitonという世界最大の鉱業企業が、世界3位の規模のRio Tintoという同業他社に対して買収を提案しました。買収金額は1300億㌦、日本円で14兆円を超えるという、実現すれば過去第2位の規模の買収になります。買収の目的は、
ロジスティクスを統合・合理化することによるシナジー効果
市場シェアの拡大による価格交渉力の維持
政情不安定な地域の鉱山の開発
将来の石油メジャー買収を含めた資源業界再編への足がかり
などです。特に鉄鉱石については市場の45%を占有することになります。これはアンチトラストに抵触するものと目されていますが、ブラジル企業のリオドセが既に35%のシェアを持っているので、一部の鉱山は売却する必要があるとしても全体としてアンチトラストによる規制は限定的になると思われます。
また個人的には、ウランのシェアでも恐らく世界1位になることに注目しています。ウラン価格はスリーマイル島の事故以来低迷していましたが、温暖化対策と石油価格の上昇を受けて各国で原発の価値が見直されたことから、2005年以降は急激に価格が高騰しています。なお、2010年には更に需給が悪化すると見られ、日本の原子力発電は長期契約でウランを確保しているので供給については心配ないとはいえ、契約価格の上方修正を迫られるかもしれません。価格高騰の結果、鉱物メジャーはよりキャッシュリッチになり、同様にキャッシュリッチとなった石油メジャーと提携・合併を繰り返しながら、近い将来には資源メジャーへと変質を遂げていくものと考えられます。
国レベルでも、資源外交への意識が強まりつつあります。特に中国は資源を確保すべくアフリカでのプレゼンスを高めることに躍起になっています。もともとアフリカには独裁政権が多く、彼らは思想的には西側の自由主義よりも中共に近いこともあって、両者は急接近しています。中国は独裁政権を支持し資金を提供する見返りとして、資源を提供してもらうという関係を構築しています。例えば、ダルフール紛争で大量虐殺を行っているスーダン政府に対し、石油の見返りとして中国が資金や武器を提供しているのは有名です。これに反対して北京五輪のボイコット運動がアメリカやヨーロッパで起きています。
その他にも、カスピ海沿岸と国内を結ぶガスパイプラインが既に完成し、またLNGプロジェクトのサハリン1も全量がパイプラインを通じて中国へ流れることになっています。加えて東シナ海ではガス田の開発を推進するなど、資源確保に向けた中国の動きは強烈です。
個人的には、今後10年の間に資源を持つ国がより経済発展を遂げ、世界経済への発言力が高まるのは間違いないと感じています。中でもロシアは非常に怖い。不毛の地と思われたシベリアは天然資源が豊富で、石油の埋蔵量も大きいと見込まれています。中東の産油量が下降期に入りつつあることを考えると、ロシアの発言力は一層高まるものと思われます。
問題は、ロシアが信用に足る国ではないということです。ロシアは国家間の条約を今まで殆ど遵守しない国として国際的には知られていますが、近年は民間ビジネスについても強権を発動し、ビジネス上のルールを侵害しています。サハリン2プロジェクトが政治的な圧力で一時白紙になり、プロジェクトの権利の半分をロシアの半国営企業であるガスプロムに譲渡することになったのは記憶に新しい話です。(これを許してしまうほどロシアの政治力が強いということは、日本から資金や技術提供の見返りとして北方領土問題を解決するメリットがロシア側には失われ、悲願の4島返還は遠のいたと言わざるをえません。)
一方、日本の資源外交も活発化している模様ですが、経済力の落ち込みから以前のような価格交渉力がなく、資源確保に向けた交渉では苦境に立たされる場面が増えたと感じています。為替レートは長期的な国の経済の強さを表しますが、2000年と比べて対ユーロでは50%、対ポンドでは20%も価値が低下しており、対ドルではほぼトントンですが、その間日本がデフレだったことから、実質的なジャパンマネーの購買力の低下はそれ以上だといえます。100%近くの資源を輸入に頼っている日本としては由々しき事態なのですが、政治が全く関心を持っていないことに苛立ちを覚えます。
さて、ここでようやく話は危機管理に再び戻ります。危機管理とは、リスクが何なのかを把握することから始まるわけですが、オイルショック以降、30年近くも当たり前のようにエネルギーを確保し浪費してきた日本人にとって、トイレットペーパーを買いに走った当時の記憶は薄れ、エネルギーの問題は目先に迫ったリスクとして捉えられないのではないかと不安に思います。
No.32|学校生活|Comment(0)|Trackback()
URL :