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MBAから会社に復帰したサラリーマンのリハビリブログ

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2024/05/07(Tue)21:09

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マーケット雑感

2008/03/23(Sun)11:47

アメリカ市場のCDS(クレジットデフォルトスワップ)のスプレッドが急拡大しているようです。ちょっと詳細は忘れましたが、ドイツ市場のスプレッドと逆転したというニュースを先日見た記憶があります。これは非常に小さなニュースでしたが、個人的には大きな驚きをもって眺めていました。

中東を中心としたオイルマネーや政府系のファンド資金はドルから逃避し、ユーロへ向かっています。EUを設立した時の目標の一つであった、機軸通貨の構築という点では、成功という範疇を超えてドル以上に強い通貨が現時点では出来上がったと見做していいのだろうと思います。

しかし、このサブプライムについては私が運用担当をしていた2年以上も前から問題視されていたはずですが、ここまで酷い後遺症を残すことになるとは、投資家のRisk Taking能力が如何にセンチメントに左右されるのかということを物語っています。グリーンスパンは誰よりもデータマイニングが得意でしたし、バーナンキは90年代の日本の金融崩壊についての論文を執筆していたので住宅バブルのリスクの大きさを知らないことはなかったと思いますが、度重なるFEDの利上げにも関わらず住宅価格の上昇に歯止めが掛からなかったことから、金融政策でこのサブプライム問題を回避しようとすることには今更ながら無理があったのかもしれません。

CDOは、MBSを集めてプールし、幾つかのトランシェに分けて再組成して債券化したものです。そのうちリスクの低いものにはAAAのレーティングがつきます。いわば80年代に生まれた金融技術を用いて作った仕組み債なわけですが、そのAAAの債券でも買い手が付かないという異常事態が昨年夏以降に起きていたわけです。結局は、金融技術によって一般の投資家に本来含まれているリスクが見えにくくなったことから、許容できるリスク以上のリスクを抱えることになり、ダムに開いた小さな穴でダム全体が一気に崩壊するように、市場が大きく今までとは逆の方向に振れているのが現状です。

知らないものには手を出さない、卵は1つの籠に盛らない、という投資家の鉄則は、通常のプロなら誰でも知っているはずです。しかしそれが出来ないところが人間の弱さであり、その弱さを克服するには、組織の中で明確なルールを策定し、そのルールを運用する側とチェックする側とを分離する必要がありますが、きちんと守られていたのでしょうか?CDOの収益性の高さから、経営層からマネージャーまで目が曇ってしまったのでしょうか?

CDOの価格算定技術でトップレベルだったベアスターンズは、一時期120ドルも株価がありましたが、経営状態の悪化から、ニューヨーク連銀のサポートを受けたJPモルガンにより2ドルで売却されることになりました。次の支援先はリーマンブラザーズとも言われています。

しかし、日本は政局優先で日銀総裁もまだ決定していませんが、そんなことやってる場合ではありませんね。ファイナンスの授業で、日本の金融崩壊やこの日銀相殺の問題を指摘されるたびに、他人事ながらとても恥ずかしいです。







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No.50|マーケットComment(0)Trackback()

アナリストの役割

2007/11/26(Mon)14:21

質問力という言葉が流行った時期がありますが、目が覚めるような意外な角度からの質問は、本質を考えさせられることが多く在ります。

NYから戻り、同業界出身の1年生の方と食事に行きました。自分は財務畑、先方はマーケ畑ということで、業界の動向についての情報や意見交換、といってもまあそんな堅苦しい話ではなく、メシでも食いに行きましょうという感じでBakehouseという喫茶店でコーヒーをRefillしながら粘ること4時間。いやはや、勉強になりました。

財務で資金繰りをやっていたことから、社内の資金の流れは隅々まで把握しているつもりでしたが、資金が関係しない業務については明らかにマーケ担当のほうが詳しい。業界動向や新しい技術開発状況など、ある程度は知っていたつもりでも新しい発見が多々ありました。

さて本題。彼から「アナリストはなぜ企業に対して株主重視の姿勢を求めるのですか」と聞かれ、返答に詰まってしまいました。

当社は以前減配した際に、その後暫くアナリストから株主軽視だと批判を受け続けたことがあります。批判の内容は、業績好調にもかかわらず減配するのは理解できない、配当を戻すべきだというのが主たる内容でした。

が、例えば株主重視の姿勢から配当を上げ、株主への還元を図る(電力の場合は配当株なのでキャピタルゲインは期待されていません)ことで、アナリストにはどのようなメリットが生じるのでしょうか。

当たり前のように、アナリストは投資家の立場から会社にあれこれ要求するものだと思っていましたが、よくよく考えると、アナリストの業務としては、株主重視でかつ配当の上昇が見込まれる企業にはbuy、逆の企業にはsellのレーティングをつければいいだけなので、企業に働きかけることの意義はないように思えます。

特に自社でファンドを保有しているバイサイドのアナリストならともかく、セルサイドのアナリストにはメリットがありません。すでに企業の株を保有している自社の顧客に対してトータルリターンを向上させるという目的で企業に働きかけるのならわかりますが、アナリストの報酬は見通しの正確性やレポートの質に基づく顧客の評価によって決まるので、そのメリットはないはずなのです。

一方、公器としての役割を自任して日本の企業を米国型の株主重視のスタイルに変更させたいと思うのであればその限りではありませんが。

うーん。なぜなのだろう。

No.16|マーケットComment(0)Trackback()

原油先物価格がバックワーデーションの理由

2007/11/02(Fri)04:50

おおっ、やっと疑問がとけました。

Corporate Risk Managementの授業でなんですけどね。会社の資金運用担当だったときに、約7割をOilが占めるGSCIというGoldman SachsのIndexに連動するパッシブファンドに投資していたのですが、それまであまり見られなかった原油先物価格のバックワーデーション、つまり価格が将来になるほど低下する状況が生じていました。

例えば原油先物の今後1年間の価格はこんな感じです。

CLZ07.NYM

Crude Oil Dec 07

94.01 12:41PM ET

Down 0.52 (0.55%)

CLF08.NYM

Crude Oil Jan 08

92.76 12:41PM ET

Down 0.51 (0.55%)

CLG08.NYM

Crude Oil Feb 08

91.69 12:41PM ET

Down 0.45 (0.49%)

CLH08.NYM

Crude Oil Mar 08

90.86 12:37PM ET

Down 0.33 (0.36%)

CLJ08.NYM

Crude Oil Apr 08

89.05 12:41PM ET

Down 1.29 (1.43%)

CLK08.NYM

Crude Oil May 08

89.08 12:41PM ET

Down 0.48 (0.54%)

CLM08.NYM

Crude Oil Jun 08

88.30 12:41PM ET

Down 0.53 (0.60%)

CLN08.NYM

Crude Oil Jul 08

87.67 12:16PM ET

Down 0.49 (0.56%)

CLQ08.NYM

Crude Oil Aug 08

87.53 10:23AM ET

0.00 (0.00%)

CLU08.NYM

Crude Oil Sep 08

86.75 9:33AM ET

Down 0.18 (0.21%)

CLV08.NYM

Crude Oil Oct 08

86.36 Oct 31

0.00 (0.00%)

CLX08.NYM

Crude Oil Nov 08

85.84 Oct 29

0.00 (0.00%)

CLZ08.NYM

Crude Oil Dec 08

84.96 12:38PM ET

Down 0.42 (0.49%)

1年後の価格は現時点よりも10ドルも低く、激しいバックワーデーションになっていることがわかります。

これはなぜなのでしょうか。例えばコモディティのなかでも、金などそれ自体から付加価値が生まれない商品の先物価格は以下のアービトラージの式を使って求められます。ちなみにF0(T)はTに満期を迎えるゼロ時点での先物価格を表しており、Stはt時点でのスポット価格、iは金利、SはStorageコストです。

9cc63ea8.jpeg



つまり、半分より上の表(Physical Storage)は、現時点で商品の現物を購入し、将来にそれを販売する際のCFの流れで、下半分の表(Synthetic Storage)は、将来にその商品現物を購入するために先物取引を使って価格を固定し、現時点ではそれに必要なCFを用意するという取引を表しています。

単純に言えば、両方の取引のCF Todayは等価ですので、CF at Day T(満期)も等価になる必要があります。もし差がある場合はアービトラージの対象となります。CF at Day Tの式を用いて計算すると、F0(T)=S0+iS0+S、つまり先物価格は、ゼロ時点でのスポット価格に、金利分をプラスして、更にStorageコストを追加したものだということがわかります。

感覚的に捉えると、現時点で現物を購入する費用に、その購入代金を調達した資金分の金利を乗せて、さらに現物を保有することにかかるStorage費用を上乗せしたものが、先物価格であるということです。金利もStorage費用もプラスですので、一般的に商品先物の価格は満期が長くなるほど右肩上がりになると考えられます。

しかし、原油など、利用次第によっては付加価値を生む商品は、この式に機会損失の概念を加えてやる必要があります。上記の式、F0(T)=S0+iS0+Sは、商品を保有する側と、将来購入する側のコストが同じになるように調整したものですが、例えば先々の供給不足が懸念される場合は、現物を保有する側には機会利益が生じて、商品を購入する側には機会損失が生じると考えられます。言い換えれば、供給不足になるような事態は、現物を保有する側にはメリットがあるということですね。この機会利益をxと置くならば、上記の式はF0(T)=S0+iS0+S-xに変換されることになります。

つまり、現状は将来のShort supplyへの期待(不安)が大きく、x>iS0+Sになっているため、先物価格がバックワーデーションになっているということです。

なぜBackwardationやContangoが起きるのかというのははっきりと理解していませんでしたが、教授のIntuitiveな説明には目から鱗でした。

No.6|マーケットComment(0)Trackback()

健全なる懐疑心

2007/10/30(Tue)23:56

メリルリンチのCEO、Stan O'Nealがretire、というかクビになりましたね。四半期だけで2.24Billionのロス、日本円にすると約2500億円超の損失を計上するようです。サブプライムが直接的な原因なので、本人というより、リスク度外視で信用力の低い借り手にややこしい仕組みのローンを提供していた、金融業界や市場全体の問題のような気もしますが、アメリカでは辞職は当然のこととして受け止められているようです。ただ退職金に加えて160MillionものStock Benefitを獲得しているのは、今後、批判の対象になりそうですけど。

思えば自分が資産運用の担当者だったときも、ある大手の運用会社からCDOをポートフォリオに入れたいという要望がよくありました。こぞって彼らは、この商品にはまだ超過収益獲得の余地があると述べていたものです。

実際、CDOはRMBSやMBSなどを集めた2次的な商品で、その構成証券によってリスクリターン関係が大きく異なるので、はっきり言って普通の投資家にはそのリスクが見えにくくなっています。結局、うちの会社は投資を見合わせましたが、投資家の鉄則である「健全なる懐疑心」と「知らないものには手を出さない」を徹底することが機関投資家には重要ですね。

No.2|マーケットComment(0)Trackback()