さて、Risk Managementの授業は相変わらず目から鱗です。コンタンゴやバックワーデーションがどう先物取引に影響するかがよくわかりました。
いま手元に現物のコモディティを保有しており、3ヵ月後に売却する予定だとします。市場価格の下落を心配してヘッジ取引をしたいと考え、3ヶ月先物をショートしました。このときの実現利益は幾らでしょうか。
このヘッジ取引は、いわば将来の販売価格を現時点で確定させることであり、従って利益は、(現時点で確定させた先物価格)-(現時点での現物価格)になります。
しかし現実は、3ヵ月後に現物を売却予定の場合、3ヶ月よりも長い先物でヘッジをかけていきます。それは、先物取引の殆どが満期前に反対取引で相殺、差額決済されることから、満期まで先物取引を保有することは、取引量の低下にともなう流動性リスクを抱えることになり、余計なコストが発生することになります。
では、4ヶ月満期の先物で3ヵ月後の現物取引をヘッジした場合の利益は幾らになるでしょうか?3ヵ月後のスポット価格をS3、4ヶ月後に満期を迎える先物の3ヵ月後の価格をF3(4)とおきます。現時点でのスポット価格はS0、現時点での4ヶ月満期の先物はF0(4)と表します。
まず現物を売買することによる利益は、S3-S0です。ショートポジションの先物取引の利益は、F0(4)-F3(4)です。これを合計すると、F0(4)‐S0+S3-F3(4)となります。この式のF0(4)‐S0は、先ほどの利益の式(現時点で確定させた先物価格)-(現時点での現物価格)と同じです。従って、満期前で取引をクローズさせるとS3-F3(4)だけ価格が変動することになり。これがリスクだというわけです。
一般化すると、St-Ft(T)、tは現時点、Tは満期を表します。このスポットと先物の価格差をベーシスと呼び、ヘッジ取引にはベーシスリスクがあると言います。
ショートポジションの場合、もしバックワーデーションであれば、先物価格がスポット価格よりも低い状況ですので、ベーシスはプラスになります。コンタンゴであれば、逆にベーシスはマイナスになります。またこれがロングポジションでのヘッジ取引であった場合、ベーシスはバックワーデーションでマイナス、コンタンゴでプラスになります。
機関投資家が運用するコモディティファンドは、先物取引をロングし、ロールオーバーすることでポートフォリオを構築します。従って、先物価格がバックワーデーションへ動くときは、ベーシスがマイナスとなり、マイナスの利益が発生してしまいます。
資金運用を担当していて不思議だったのは、WTIなどの原油先物価格が上昇しているにも係らず、コモディティファンドがマイナスを計上することがありました。直感的には、先物価格が上昇すればファンドも上昇するだろうという気がしていましたが、先物価格のイールドカーブがコンタンゴかバックワーデションかによって、ロールオーバー時の利益に影響を与えていたのですね。
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