インディアナポリス空港は、現在新しいターミナルが建設中です。今年末には旧ターミナルは廃止、新ターミナルへ全面的に移行する模様です。ただし、残念ながら私が帰国した後の話です。
さて空港に飾ってあった説明書きを眺めていたら、目を引く単語を発見しました。LEEDです。その理由は、アトランタからインディアナポリスへ向かう機内でHarvard Business ReviewのGreen Strategyという本の中で、偶然にもLEED制度についての論文を読んでいたからです。
三菱総研のHP(http://chikyukankyo.com/column/detail.php?column_id=60)に記載されている文章がわかりやすいので引用すると、
「1993年には、グリーンビルディング促進のための全国的な組織、米国グリーンビルディング協会(US Green Building Council)が発足しました。建築関係だけでなく、大学・研究機関、政府機関、公益事業者、報道、保険会社など様々な分野の4,000以上②の団体が この協会に会員として加盟しています。この協会の中心的な活動が、建造物の環境配慮基準LEED(Leadership in Energy & Environmental Design)の開発とその認証制度の運用です。LEEDは、グリーンビルディングに対する消費者意識を高める、ナショナルブランドとしてグリーンビル ディングの市場価値を高める、建造物の“グリーン化“競争を活性化する、などを目的に作られた民間の環境配慮基準で、必須項目のすべてと、選択項目の中か ら必要なポイントを獲得し、所定の審査を受けることにより、グリーンビルディングの認証を取得することができます。」
つまり、S&Pやムーディーズが債券にレーティングするように、環境マネジメントシステムを構築した企業がISO14001を取得するように、建築物に対して環境的側面からレーティング・認証を付与するシステムがLEEDなのだろうと思います。環境後進国とされるアメリカですが、最先端のアイデアを取り入れるのは非常に早い国です。日本は技術レベルでは環境先進国といえるかもしれませんが、それを実行するまでに様々な手続きや調整が必要で、実行力という面では逆に後進国と言えるかと思います。例えば風力発電の設備は、実はアメリカがドイツを抜いて近々1位になると見られるなど、運用のスピードや実行力はアメリカは日本のはるか彼方を行っています。
このLEED制度も英国に次いで導入され、こうしてHarvard Business Reviewに取り上げられたり、すでにアメリカ国内でも14000のプロジェクトに適用され、国境を越えて30カ国でも使われているなど、非常に活用度の高い制度です。日本にも同様のCASBEE(Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency)という制度がありますが、こちらは殆ど一般には認知されていません。
さて、環境対応型の建築とは、環境への不可をライフサイクルを通じて低減させた建物のこといいます。例えば、自然の採光を取り入れることで照明に掛かる電力を削減し、照明から発生する熱が減少したことによりエアコンに掛かる消費電力が低下させた建物や、屋上を緑化して夏場のヒートアイランド効果の改善に取り組んだ建物などを指します。ちなみに、世界で最も高い評価を得ている建物は、なんとインドにあるCII-Sohrabji Godrej Green Business Center in Hyderabad, Indiaです。自然採光を取り入れ、なんとビルの90%のエリアでは、昼間はライトが使用する必要がないそうです。また同サイズのビルと比べて、エネルギー使用量は55%減だそうです。
いまやアメリカやイギリスでは、主要な企業はブランド力を高めるためにも、このような制度を活用して高い社会的評価を得る努力を行っています。しかしながら重要なのは、環境対応型の建築物は、イニシャルコストは非常に掛かりますが、ランニングコストが非常に安くなるため、長期で見たら通常の方法よりもコストが抑えられるという魅力があり、それが各企業を環境対応型の建築に駆り立てているとされています。
この話を聞いて思い出したのが中国の建築です。いまや上海などは摩天楼が立ち並ぶ巨大都市です。しかし見た目は華やかですが、根深い問題を抱えていると、元上海総領事で早逝された杉本信行氏は「大地の咆哮」で指摘しています。中国の建築は、中国製の商品同様、デザインは先進国のものを模倣しているようですが、中身は酷いもので、例えばコスト削減から高層ビルにも関わらずエレベーターの本数を制限したために、朝の出勤時間にはエレベーター前で何十分もエレベーターを待つ人々の姿が見られるそうです。また、維持管理のことを配慮せずデザインされていることから、メンテナンスや窓の清掃作業が簡単に出来ないなど、維持費用が嵩んでいるようです。これはあくまでも本が執筆された当時の話なので現状はわかりません。帰国したらぜひ中国へ旅行して自分の目で確認したいものです。
まあお隣の中国の批判をしたものの、日本でも同様の事例は多々見られます。ハコ物を作ったものの、維持費がかさんで破綻している施設や、そもそも公共事業依存型の経済なので、整備した道路や施設の補修費が年々嵩んでいくことになり、長い目で見たら国の財政の圧迫要因です。揮発油税の使途の中には道路の整備に加えて維持管理費も含まれていると思うのですが、この時限立法が更新され道路が作り続けられれば、更に財政が圧迫されてしまいます。まあしかし今急に廃止されてしまうと、公共事業に頼っている地方の経済は破綻していくことになり、更に国の経済を混乱させることになりますが。
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